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33.甘藷の効用 甘藷と薬効
 先号で甘藷の栄養成分について大まかに見てきた。本号では食事と病気の予防という観点から甘藷の薬効について考えてみる。

 「医食同源」ということばがある。食事と病気の治療は、ともに人間の健康を保つもので、その源は同じである、という意味である。我が沖縄では、ごちそうになったとき「くすいなゆたん」とか「くすいなたん」という言葉を聞く。あるいは「ヒージャーぐすい」「さぎぐすい」「ぬちぐすい」などの、ことばの示す通り食べものはすべて栄養であり、薬餌効果のある「くすり」であるという観念が強かった。

 我らの先達は、その昔から甘藷のもつ薬効を利用して民間療法を試みている。その代表的な事例を2~3あげてみると、「シブイワタ」(痢病)のときはいもくずを食べる、下痢のときは葉を緩下剤として豆ふとともに煮て食べる。逆に「便秘」のときはカンダバー(甘藷の葉)をお汁にして食べる、「切り傷」のときの止血に葉をよくもんで傷口につける、等々である。先人たちが生活の中からあみ出した“知恵”の一端である。

 それでは分析された甘藷の栄養成分をもとに、病気の予防にいかような効果が期待されるのかを見ていくことにする。

・高血圧の予防・・・甘藷のミネラル分の中で、とりわけ多く含まれているのがカリウムである。その量は精白米の18倍にも達する。カリウムはナトリウム(食塩に多く含まれている)を体外に出す作用があり、血圧を下げるのにすぐれた効果を発揮する。また、甘藷に含まれる食物繊維の働きでナトリウムを吸着し、併せて便秘の予防効果も加わるので高血圧予防に大きな効果が期待できる。

・コレステロールの低下・・・甘藷に含まれる食物繊維は便秘解消に役立つことは前記の通りだが、血液中のコレステロールも低下させる効果があることも明らかにされている。それと同時に血糖値もコントロールする働きがあることが解明され、現代人にとっては欠くことのできない食品の一つだといわれている。

・美肌をつくり出す・・・ビタミンAは皮ふの荒れを防ぎ、ビタミンCは美しい肌を保つために必要なコラーゲンの形成に主要な働きをし、ビタミンEは細胞の老化を遅らせ、若々しい肌を保つ働きがあるとされている。甘藷にはこれらのビタミン類が豊富に含まれている。

 その他にも、品種(ベニハヤトやベニアズマなど)によっては、ガン細胞の増殖をおさえる働きがあるともいわれている。

 甘藷といえば、多くの人が糖質や澱粉が多いだけの地味で素朴な食べ物としてのイメージしか持ってなかったと思うのだが、まさに「医食同源」の価値のある食品だといういうことがお分かりいただけると思う。