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27.近代沖縄における甘藷の品種と改良
今回から、 「近代沖縄における甘藷の品種と改良」 について紹介していきます。  近代沖縄では、 品種改良が進み 「西原叢書」 (そうしょ)によれば、 「沖縄には、 120種類以上の品種があり、 同じ種類で名称が異なるものもあろうが、 品種の多いことは事実である」 と述べられている。 そして66種類ほどの品種が用途によって、 分類し記載されている。 そのなかでも広く栽培されている、 よい品種として泊黒、(トウマイクルー) 真栄里、(メーザトゥー) 坂下、(さかした) 台湾、(タイワヌー) 佐久川、 和蘭、(ウランダー) 松川那覇屋(マチガーナーファヤー)、 赤高良小、(タカラグヮ) 花赤粉、(アカグー) 元気(元気)がとりあげられ詳しい説明がなされている。 「西原叢書」 は、 西原村にあった沖縄県立糖業試験場において、 第一編が1915(大正4)年に編集され、 その後講習のテキスト用として順次編集されたものと推測される資料です。 第五編が 「甘蔗論」 になっており、 その第三章に 「甘藷の植物学的性質」 が収録され、 第六編には 「甘藷栽培法」 が収録されています。
 以下に明治、 大正初期ごろ広く栽培された主な品種について簡単に紹介します。

①泊     黒
(トウマイクルー)
…来歴は不明である。 泊付近では、明治末~大正初期ころから栽培されていたようである。 末吉(シーシ)かじゃー種の実生(みしょう)種と伝えられているという。 沖縄大百科事典に明治以前に自然実生から育成されたものと思われると記述されている。

②真  栄 里
(メーザトゥー) 
…1905(明治38)年に高嶺村字真栄里(現在の糸満市真栄里)の伊敷三郎氏が作った品種。

③坂  下  種
(サカシタ)
…島尻郡真和志村字坂下60番地の新里鶴千代氏が1925~1926年頃に富名腰種の種子から改良、育成したものである。新里小、又はミチチャーともいう。

④台     湾
(タイワヌー)
…原産地は台湾で、 白台湾、 花台湾等のうち、 白台湾を一般に台湾という。

⑦佐  久  川
(サクガー)
…読谷山村比謝の出身である佐久川清助氏が泊黒、 暗川、(クラガー) 名護和蘭(ウランダー)などを掛け合わせて選抜育種したもので、8年を要したといわれる。 甘藷の主要品種として明治の末から昭和まで栽培されてきた。

⑧和     蘭
(ウランダー)
…マージやジャーガルいずれの土壌にも適し、 沖縄県で広く栽培された。 長く貯蔵できるので、 漁民にとっては、 貴重な甘藷だった。

⑨松 川 那 覇 屋
(ナーファヤー)
…島尻郡真和志村字松川123番地新垣次郎氏が1904(明治37)年頃に育成したものと伝えられている。

⑩末吉かじゃー種
(シーシー)
…首里の末吉に住んでいた野原某という人の育成した品種で、たちまち沖縄における、最大の優良品種になったようで、王家の重要な食糧になったと伝えられるという。

⑪唐カンダ小種
(トウカンダグワー)
…1930、1931年頃に沖縄県内甘藷凶作の時に、他府県から寄せられた品種である。当初は、那覇付近で栽培されたようである。 別名は布哇小(ハワイグヮ)という。

⑫新 門 小 種
(ミージョーグヮー)
…知念村字久手堅屋号新門小比嘉仙十(せんじゅう)氏が西暦1932~1933年頃に育成したものといわれる。 赤台湾や花カジャーも氏の改良、育成したものである。


(文:宮平 友介)