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29.近代沖縄における甘藷の品種と改良(3)
 戦前の沖縄県立農事試験場では、松永高元氏らの活躍で甘藷の品種改良等に多くの実績を残しました。戦後も沖縄県の農業に関する試験機関において、多数の新品種が生まれています。今回は戦後の新品種を中心に沖縄県の奨励品種等について紹介します。

 戦後まもない1947年の与儀農事試験場では、甘藷の品種の収集が開始され、その翌年には、 15470花の人工交配が行われました。そのなかから、 「膨湖」と「太白」という品種をかけ合わせて「アキホコリ」という新品種が生まれました。秋植えとしての成績がすぐれていたことから「アキホコリ」と命名され、 1961年には、秋植え用の奨励品種に決定されました。その時には、 「ナンゴク」 「ヨギムラサキ」 「ナカムラサキ」も奨励品種に決定されています。また、沖縄100号も引き続き奨励品種となっています。

 ナカムラサキは、農林省関東東山農事試験場鴻巣試験地で二宮と太白の交配で得た種子を、 1945年に農林省農事試験場九州支場で実生をおこなってできた品種です。 1948年には、九州13号と命名、 1949年にナカムラサキ(農林17号)と命名されました。 1947年に沖縄に導入され、1961年に奨励品種に決定されました。ナンゴクは1949年に与儀農事試験場(現在の県農業試験場)で、九州12号とアメリカ4号の交配による品種です。ヨギムラサキは、1949年に与儀農事試験場において、沖縄1号と九州12号の交配によってできた品種です。 1967年の導入品種として九州59号があります。 MT1351(元カヂャー自殖系)とL四一五(アメリカ品種)の交配による品種です。以下にその後の奨励品種を列記してみます。

① 1968年・・・オキマサリ(関東4号と九州6号の交配による品種)
② 1970年・・・うるま早生(ナンゴクとオキマサリの交配)
       夏まさり(南洋いもと沖縄100号の交配)
③ 1979年・・・オキュタカ(九州五八号と平安山七号の交配)
④ 1983年・・・サキヤマベニ(六四一五三三号とコガネセンガンの交配)
       アジマサリ(六四一五三三号とコガネセンガンの交配)
⑤ 1990年・・・宮農36号(1947年に現在の県農業試験場宮古支場の前身、宮古民政府産業試験場でハワイと中国紅の交配による品種、別名読谷紅いも)
⑥ 1997年・・・備瀬(沖縄県本部町字備瀬で栽培されてきた品種と思われる。宮農36号とともに読谷紅いもとも呼ばれている)
⑦ 2003年・・・沖夢紫(県農業試験場園芸支場でV4と備瀬の交配による品種)

 以上沖縄県における奨励品種について紹介してきました。

 その他の品種について『沖縄県農林水産行政史 第四巻』には、 「1954年の調査による当時一般に栽培されていた品種には、沖縄100号が35.8%、宮農7号27.4%、紅いも13%、比謝川1号5%、南洋いも3.6%、茨城1号1.4%、八重山赤粉1.2%、このほか真栄里30号、暗川、花暗川などがあり、数多くの品種が栽培されていた」ということが記されています。
(文:宮平 友介)