4 病き気の予防に効く甘藷のはなし |
医食同源 |
「医食同源」ということばがあります。食事と病気の治療は、ともに人間の健康を保つもので、その源は同じである、ということです。甘藷はまさに、「医食同源」の価値のある食品だといわれています。
私たちの沖縄県では、はるか昔から、甘藷はただたんにいもを主食として食べるだけでなく、茎や葉っぱもじょうずに工夫して利用してきました。
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薬用いもとして知られる「シモン1号」と焼きいもに適
した「ベニオトメ」 |
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いもカズラは 豚や牛・馬などの家畜のたいせつな飼料として用いてきましたし、枯れたカズラは畑で焼いて木灰として使ってきました。また、カズラは煮炊きをするときの燃料にもなったのです。
葉っぱは野菜の代用品として料理に使用されるほかに、薬草の一つとして人びとの暮らしに役立ってきました。切り傷などをつくったときは葉をよくもんで傷口につけて、血止めをしてきましたし、便秘のときには、カンダバー(葉っぱ)のお汁を呑んで、解消してきました。腸の管でやわらかい便をつくり、排せつをうながす効目があったからです。
このように、甘藷は、主食となったいもはもちろんのこと、葉っぱや茎まで残すことなくとてもうまく工夫して利用してきたのです。
2の「栄養探検」のところでも少しふれましたが、ここでは、甘藷が病気の予防にどのように効果があるのかをさぐってみることにします。
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高血圧の予防 |
甘藷にふくまれるミネラル分のなかに、とりわけ多くふくまれているのがカリウムです。その量はごはん(100
g、いもは焼きいもの場合)の18 倍ともいわれています。
カリウムはナトリウムをからだの外に出す作用があるため、血圧を下げるのにとても効果があります。また、甘藷を食べることによって食物繊維が働いて、ナトリウムを吸着する作用や、便秘の予防効果もくわわるので、高血圧予防に役立つのです。
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コレステロールの低下 |
甘藷にふくまれている食物繊維は、便秘を解消させる効果があることはよく知られていますが、血液中のコレステロールも低下させる作用もあることが明らかになりました。それと同時に血糖値もコントロールする働きがあることもわかり、現代人にとっては欠くことのできないたいせつな食品だとして、みなおされています。
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ガンの予防、コレステロールの低下に効く「ベニアズマ」と「ベニコウケイ」 |
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血液中にふくまれているコレステロールは、ふつう、肝臓から胆道をとおって腸の中に排出されます。ところが、腸の消化・吸収によってふたたび肝臓へともどるコレステロールも多いのです。これが人間のからだに悪さをします。甘藷にふくまれている食物繊維は、腸のなかに排出されたコレステロールを吸着して、便とともにからだの外へ排出します。つまり、肝臓へもどろうとするコレステロールをたちきって、便としてからだの外へ出す働きをするというわけです。
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ガンの予防 |
甘藷の黄色みをおびた品種(ベニハヤトやベニアズマなど)にはからだの中でビタミンAとして働くβカロチンをたくさんふくんでいます。にんじんなどの緑黄色野菜にもたくさんふくまれるこのβ
カロチンは、生体膜(物質の移動など、生体機能にたいせつな役割を果たす)を守り、ガン細胞がふえるのをおさえる働きがあるといわれています。
βカロチンには油に溶けて吸収されるという性質があるため、天ぷらにしたり、植物油で炒めたりすることが、栄養効果を高める調理法といえます。
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便秘にきく |
便秘を解消するには、食物繊維をたくさん摂ることがたいせつだということは、よくしられています。甘藷にはこの食物繊維がたくさんふくまれています。
食物繊維は水分を保つ性質があるために、腸内でやわらかい便を作り、排出する作用があるのです。また、腸内細菌の栄養分となって、腸の働きを整えます。それらの作用が便秘予防に効果的に働くというわけです。このほか、甘藷にふくまれる糖質も、腸内で発酵してガスを発生させることで、腸を刺激し、その活動を活発にさせる働きがあります。
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美くしさをひき出す |
ビタミンAは皮ふがカサカサに荒れるのを防せぎ、ニキビや浅いシワの治療に役立ちます。
りんごの10 倍以上もふくまれているビタミンCは、つややかな美しい肌を保たもつために必要なコラーゲンの形成に主要な働きを果たします。そのほかに、ニキビやシミ、そばかすの予防や傷きずあとの回復にも効果があります。
ビタミンEは、細胞の老化を遅らせ、若々しい肌を保ってくれます。このように甘藷は美しさをひき出すビタミン類を豊富にふくんでいる食品ということがわかります。 |
季節の果物の一つとして甘藷が店頭に並んでいます。
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甘藷はなぜ甘い? |
甘藷には、でんぷんを分解する酵素・アミラーゼがふくまれていて、熱をくわえると、このアミラーゼがでんぷんに作用して、麦芽糖にまで糖化して、甘くなるのです。
焼きいものように適度な温度でじっくり焼きあげると甘みが強くなり、電子レンジなどで短い時間で加熱したものは甘みが少なくなります。
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焼きいも器 じっくり焼きあげると
甘みが強くなります。 |
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甘藷とおなら |
甘藷を食べるとおならが出るってホント?
甘藷のでんぷんのアミロースは、消化酵素βアミラーゼによって70 パーセントぐらいしか分解されません。このでんぷんは、人間の消化酵素では分解されないβグリコシド結合をふくんでいるといわれています。それだから、消化されなかったでんぷんのかけらは栄養として吸収されないで腸ち内菌の栄養源となり、そこで分解され、炭酸ガスを発生し、腸内ガスとなり“
おなら” や“ げっぷ” の原因となります。 |
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甘藷を食べると太る? |
甘藷を食べると太るってホント?答えはノーです。甘藷は水分が多く、どちらかといえば、低エネルギー食品です。焼きいも100
gとごはん100gはほぼ同じエネルギー量で、その意味からも甘藷は主食がわりにもなるわけです。
そもそも肥満は、食べる量に対して運動量が少ないときにおこることで、運動不足が肥満のいちばんの原因といえます。 |
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