2 自然実生と人工交配によってつくられた品種
沖縄県生まれの品種
佐久川… 1902(明治35)年に、読谷山村字比謝(現在の読谷村字比謝の佐久川清助という人がつくり出した品種です(第3章116 ページを読もう)

羽地台湾… 1903 年に、羽地村我部祖河(現在の名護市我部祖河)の金城という人がつくり出した品種です。

真栄里… 1905 年に高嶺村字真栄里(現在の糸満市真栄里)の伊敷三良という人がつくり出した品種です(第3章の116 ページを読もう)

長  浜… 1870(明治3)年ごろつくられた品種です。

暗  川… 1870年に読谷山村字楚辺(現在の読谷村楚辺)でつくられた品種です(第3章の116 ページを読もう)。

坂  下… 1912(大正元)年に、真和志村字坂下(現在の那覇市坂下)の新里亀千代という人がつくり出した品種です(第3章の116 ページを読もう)

沖縄百号… 1934(昭和9)年に沖縄県でつくられました。戦時中から戦後の一時期まで全国で栽培されました。中国(福建省)では1930 年代によく栽培されたと伝えられています。

皮の色は赤、肉は黄色で、でんぷんの材料や家畜のエサとして利用されています。また人工交配するときにもよく利用される品種の一つです(第3章の117 ページを読もう)。

比謝川1号… 1920 年代の半ばごろ、沖縄県立農林学校の教諭だった我謝栄彦という人がつくった品種です。植付つけから3~4ヵ月くらいで収穫できるやわらかい品種です。戦時中によく栽培されていたようです。

宮農36 号… 1947(昭和22)年に、宮古民政府産業試験場で、垣花実記らによってつくられた品種です。現在、つぎに記す〝備瀬〟とともに〝読谷紅いも〟とよばれている品種です。

備  瀬… 本部町字備瀬の集落で栽培されてきた品種です。1982(昭和57)年ごろに読谷村に導入され、前期の宮農36 号とともに読谷紅いもともよばれています。

本土で生まれた品種
源  氏… 1895(明治28)年にオーストラリアから広島県に入ってきた品種です。はじめは三徳いもとよばれていましたが、後に〝源氏〟・〝げんち〟・〝元気〟などとよばれるようになりました。便利・愛知紅赤・鹿児島などとよばれている種類も源氏の仲間です。

 皮の色は赤茶色で、肉は黄色をおびた白。おそ植えもでき、ほかの作物があまり育たない場所にもよく育つといわれています。食料として用いるほかに、でんぷんの材料としても使われます。

40 日… 近畿地方で昔から栽培されてきた品種で、早生40 日、早生赤、赤40日などとよばれました。

 皮の色はうすい赤で、肉は白。苗が作りやすく、収量も多いのが特徴です。食料だけでなく、でんぷんの材料としても栽培されていました。

蔓無源氏… 1907(明治40)年に鹿児島県で見つかった源氏の芽状突然変異の種類で、源氏とよく似にた特徴をもっています。源氏よりもつくりやすく、しかも収量も多いといわれています。

花  魁… 明治時代の初めに、九州地方から関東・東海地方に伝えられたといわれています。皮の色は赤紫色で、肉はまわりが白くまん中は紫色していて、粘り気があります。海岸から遠く離れたところや火山灰地帯でよく育ちます。

太  白… 埼玉県でよく栽培されている種類で、太白埼玉一号は埼玉県農事試験場で生まれた品種です。戦時中にはたくさん栽培されました。

 皮の色は赤で、肉は白。粘り気があって、甘くておいしいいもですが、苗や葉、茎が育ちにくいという欠点があり、かぎられた場所以外ではほとんど育ちません。

紅  赤… 1898(明治31)年に、埼玉県で発見された種類で、ふつう「金時」とよばれていますが、埼玉県では「川越いも」ともよばれています。東京都や茨城県などでは「千葉赤・大正赤・高座赤・茨城赤」などとよばれています。西日本で栽培される「源氏」、東日本で栽培される「紅赤」は、ともに日本を代表する品種としてよく知られていました。焼きいもといえば紅赤といわれるぐらい有名でしたが、「ベニアズマ」という新しい品種があらわれたため、栽培面積もぐんと少なくなってしまいました。

七  福… 1900(明治33)年に、アメリカから広島県に入ってきた種類です。この品種は九州・四国、瀬戸内などに広まりました。

 皮の色は黄色っぽい白で、肉は黄色。乾燥した地帯で栽培しやすく、人工交配のときによく使われる種類です。

隼人いも… 1910 年代(大正時代)から鹿児島県で栽培されている種類です。
 皮の色は茶色っぽくて、肉は淡いオレンジ。

 カロチンが多くふくまれていて、甘みのある品種です。乾燥地帯でよく育ちます。

本土の甘藷の栽培時期
 本土でも、平均気温が15℃以上になると、甘藷の植え付け時期となります。したがって、4月の上旬ごろになると、甘藷の苗づくりが始まります。苗床で苗を育て、およそ50 日ほどで植え付け時期となります。

 植えるのが早すぎると、寒さで葉がいたみ、根を張るのがおくれ、暑すぎたり乾燥すると根がいもに育たなかったり、いもの太り方が悪くなったりします。

7月の初めごろが植え付けの限界とされています。6月の梅雨の時期に苗を植え、10 月の下旬に掘るのが一般的です。

甘藷の花とタネ
甘藷はヒルガオ科のアサガオと同じ仲間で、花もアサガオと似にています。日本では沖縄県以外ではほとんど咲きません。花が咲くのは日照時間や温度などが深くかかわっているからです。甘藷はふつう、いもづるをさして栽培するので、花を咲かせ、タネを採る必要はありません。しかし、優秀な品種を作り出す品種改良にはタネが必要となります。そこで、同じヒルガオ科の仲間であるキダチアサガオに甘藷をつぎ木して花を咲かせ、タネを採ります。このタネを植えると、さまざまな甘藷ができるわけです。