植付つけから収穫かくまで
1 植え付ける前
畑の整地
 甘藷の植え付けは、沖縄と本土では大きく異なります。その主な理由は、すでにお話したように、気候と土の違いと甘藷の持っている性質が影響しているようです。

 沖縄では、甘藷を植え付ける前に、特別に土壌の消毒はしませんが、本土ではきちんと消毒を行うようです。このように植え付けのスタートの地点も早くも違いが見られます。沖縄の甘藷の植え付けを中心に見ていくことにします。
 まず、甘藷を植え付ける畑を深く耕すことから作業が始まります。畑を深く耕すことを、むずかしいことばで「深耕」といいますが、深耕が必要なのは何も甘藷の栽培にかぎったことではありません。農作物を植えるときは、できるだけ土を深く掘り起こして、下にある
固い土をほぐしてやることが必要なのです。

 沖縄の土壌は、水を保つ力が小さく、下の方の土がひじょうに硬いため、根がのびにくく、かんばつの被害をうけやすいといわれています。


掘ほり起こした土をこまかくくだいて整地します。
 また、栄養分が多いといわれるジャーガル地でも、かんばつのときは水を保つ力があるために、その特性を発揮しますが、反面、空気の通りが悪く、雨が降ると泥のようになり、乾燥したときは地割れを起こすという欠点があります。いずれにしても、自然の状態のままでは、作物の栽培に適した土壌とはいえないようです。

 このような土壌の欠点をおぎなう意味から、沖縄の農家の人たちは、1cm でも深く土を耕すために汗水を流してきたといえます。
 畑を深く耕した後は、整地を行います。

 このような作業も、現在では「プラウ・ロータリー」という機械をつかって行うようになっています。プラウ・ロータリーで行う整地作業を簡単に紹介しておきましょう。

 耕耘機(トラクター)に「プラウ」という土を耕す機械を取り付けて、土を深く掘り起こします。そして「ロータリー」という回転する機械で土をこまかくほぐしていきます。

現在では機械を使って整地作業も行われています。
 整地が終わり、植え付けの2週間ぐらい前になると、畑の前面に堆肥や科学肥料などをほどこします。堆肥というのは、雑草や落ち葉などを積みあげてくさらせた肥料のことです。戦前の沖縄の海辺近くにある畑には、堆肥のほかに「ホンダワラ」などのような海草も、畑にすきこんで肥料としていたようです。ホンダワラは、沖縄の方言で「モークサー」とか「ウミクサー」などとよばれています。


堆肥のすきこみ。植え付けの二週間前になると、機械を使って行います。
嘉手納で栽培された甘藷の品種
 昭和30 年代まで嘉手納で、栽培された甘藷の主な品種は、「暗川」・「佐久川」・「泊黒」・「真栄里」・「長浜」・「松川那覇屋」・「台湾」・「沖縄1号」・「比謝川1号」・「又吉」・「沖縄100 号から105 号」まであります。熟度によって早生種・中生種・晩生種があります。

 早生種は植え付けてから3ヵ月後に収穫できますが、くされやすく、晩生種は収穫まで6ヵ月かかりますが、くされにくいという特徴があります。