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32.甘藷の効用 ヘルシー食品としての甘藷
(しょうこう)王代(第2尚氏王統17代1804~1834年)の御典医・渡嘉敷通寛の著した「御膳本草」は、幾百年にわたって体験した事実の集大成と見るべき養生の書である、とされている。食品材料の性質、人体に及ぼす影響をくわしく記述し、そのうえ食べ合わせについても述べられているものである。

 同書の中に「はんすいも(甘藷)は味が甘くておいしく、胃を健全化し、足らないものを補い、腎臓なども強くなる。常食すると長命する。いもの葉は、胃に和合し、大腸をなめらかにして、大便をよく通す。野菜のかわりに何時でも食べたらよい」という記述が見られる。

 甘藷の栄養成分の中でも、糖質(100g中)34.6gと食物繊維(同)2.2gが突出して多い。そのことが「甘くておいしい」という評価につながっているのであろう。甘藷のもつ甘みは、調味料などによって人工的に作り出されたものではなく、自然の甘みである。また、「大腸をなめらかにして、大便をよく通す」というのは、食物繊維の働きによるものである。食物繊維は、人の消化液で消化されずに保水性があるために、腸管でやわらかい便をつくり、排出作用があるとされている。「便秘にはいもがよい」ということは、古くから伝えられていることだが、きちんとした根拠があったことがわかる。

 その他の甘藷の栄養成分について、身近な食品類と比較しながら見ていくことにする。

 ビタミンC・・・リンゴの10倍も含まれているという。しかも、甘藷に含まれるビタミンCは、つややかな肌を保つために必要なコラーゲンの形成に主要な働きをするものである。

 ビタミンB1・・・糖質の働きを助ける作用があるとされるビタミンB1の含有量は精白米(ごはん)の3倍以上もある。

 ビタミンE・・・いも類や野菜類の中でも、甘藷は最も多くのビタミンEを含んでいる食品だといわれる。ビタミンEは、別名「老化防止のビタミン」とも称されるように、老化現象のもととされる過酸化脂質が体の中にできるのを抑制する働きがある。カリウム・・・甘藷のミネラル成分の中で、最も注目されているのがカリウムの多さである。精白米(ごはん)の18倍もの量が含まれているといわれている。
 カリウムは塩分を体外に放出する作用があり、塩分の摂り過ぎを指摘される現代人の食生活には欠くことのできない食品の一つだといえよう。

 澱粉・・・体の中で消化吸収されてエネルギー源になるのが澱粉である。供給されるエネルギーは精白米とほとんど同じだとされている。ごはんの代用品とされてきた理由もエネルギーの供給源としての役割をきちんと果たしてきたからだといえよう。庶民(沖縄)の主食たり得たこともうなずけることである。

 以上、甘藷の栄養成分を大まかに見てきた。これから見ても分かるように、甘藷は穀物と野菜類の性格を兼ね備えており、栄養価のとても高い優れた食品であることが理解されよう。


(文:座間味 栄議)