2 沖縄の土と甘藷
マージとジャーガル
 沖縄のように、気温が高く、雨の多いところでは、赤みがかった土、赤黄色土とよばれる土壌ができやすいといわれています。この赤みがかった土のことを沖縄では「マージ」とよんでいます。沖縄で畑として耕たがやされている面積の約70 パーセントは「マージ」とよばれる土壌です。



国頭マージ(嘉手納町久得)
マージとよばれる土には、二つの種類があります。その一つが、沖縄島の北部や久米島、石垣島などに分布している「国頭マージ」で、もう一つが沖縄島南部や宮古島に分布している「島尻マージ」です。国頭マージは明るい感じのする赤みがかった土で、酸性の土壌です。このような土は、パイナップルやミカンなどの栽培に適しています。

一方の島尻マージは、暗い感じのする赤みがかった土で、弱アルカリ性の土壌です。この土には甘藷やタバコなどの栽培に適しています。写真を見くら
べて見ると、一目でその違いがわかります。このマージとよばれる土は、もともとは栄養分の少ないやせた土壌で、そのままでは作物の栽培には適しているとはいえません。そこで、農家では栄養分の多い土(クチャ)を入れる(客土という)わけです。「クチャ」というのは沖縄の方言で、灰色のまだ十分に固くなっていない「泥岩」のことです。

島尻マージ(読谷村座喜味)
 もう一つの土壌である「ジャーガル」というのは、島尻層群の泥岩が風化してできた土のことです。ジャーガルとよばれる土は、栄養分が多く、作物がよくできるということを、昔の人びとはよく知っていたようです。それだから、そこには、昔から人びとが暮くらし、集落ができ、畑地として利用してきたのです。そのジャーガルの分布しているところが、沖縄島の中南部です。
 嘉手納の場合、島尻マージと国頭マージが入り混じって分布しています。そのため、今では米軍基地となっている主な耕作地は、酸性土壌でやせ地のため、作物のできはあまりよくなかったようです。甘藷をはじめ、ミカンやビワなどの果物類の栽培に適していたようです。第3章で見たように、戦前の嘉手納は、「ンムまち」ができるほど甘藷の産地でもありました。

嘉手納高校グラウンド横の地層
 甘藷が、中・南米の熱帯地方で生まれたことは前にもふれました。そこは、雨が少なく、乾燥し、栄養分の少ないやせた土地がひろがっています。このような土でも、甘藷は必要な養分を吸収し、よく育つという性質をそなえていた植物であったことがわかります。ですから、栄養分が少なく、やせた土である沖縄県の「マージ」とよばれるところでも、甘藷は十分に育ったわけです。

逆に、栄養分が多く、水を保ち、作物が良く育つといわれる「ジャーガル」とよばれるところでは、雨のよく降る年の甘藷は水ぐされするものが多いといわれています。

 沖縄から甘藷が伝わり、全国に広まるもとになった鹿児島県の山川町のように、火山灰や軽石でおおわれたやせた土地でも、気候のちがいをのりこえて、甘藷の栽培ができたのだと思います。

比謝川周辺の土壌
 比謝川周辺を見ると、両側の岸には琉球石灰岩のがけが発達していることがわかります。河口の水釜から久得橋ふきんまでは、ほとんどが琉球石灰岩のだんがいを形づくっています。そのだんがいの下の方をよく見ると、暗い感じのする赤みがかった土(島尻マージ)が積もっています。

そして、久得橋を境目として北の方に行くと、明るい感じのする赤みがかっている土(国頭マージ)が積もっていることがわかります。

 比謝川周辺の植物をよく観察すると、石灰岩質の土壌を好む植物と、非石灰岩質の土壌を好む植物、そして、土壌を選ばない植物が生育していることがわかります。